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雨の日には・・・

小学校1年生の6月、雨の中、学校から帰ると玄関の鍵が開いていました。
「あれ?」
そうっと覗くと、父の靴が見えます。
「あ、お父さんが帰ってる・・・」
急いで部屋の扉を開けると、そこには、大きな背中がありました。

「お父さん、ただいま。今日は早いね」
「雨で現場が休みになったからな」
何してるんだろう、と、覗き込むと、父はカンナの刃を研いでいるところでした。

父の前には大きな道具箱が置いてありました。
普段は押入れの上にしまってあるので、「一体何が入ってるんだろう」とずっと気になっていたんです。
その中は、初めて見る道具で一杯でした。

しばらくすると、父は「よし!」と言って、研いだ刃をカンナにセットしました。
コンコン、コンコンと木槌でたたきながら調節しています。
そして横に置いてあった板を削り始めました。

シューッ、シューッと削りくずがカンナの口から飛び出てきます。
それは、薄い薄い木のテープ。まるで手品のようでした。

「お前も小学校に上がったからな。そろそろ大きな本棚がいるだろう」
「え?僕の本棚ができるの?ねえ、僕にもやらせて」と言って、やってみますがうまくいきません。

ニコッとした父は「今日はこれでおしまい。どうだ、これから雨の日に一緒につくるか」と言ってくれました。

その日からは「あした雨になりますように。あした雨になりますように」と毎日お祈りしました。
そして雨になると「やったあ。お父さんと一緒につくるぞ!」と急いで家に帰る、そんな日々が続きました。

今でも雨の日にはあの頃のことを思い出します。